公益社団法人 大原記念倉敷中央医療機構

倉敷中央病院

名誉院長 小笠原敬三氏

公益社団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院

名誉院長 小笠原 敬三氏

京都大学医学部卒。
1981年倉敷中央記念病院入職、外科主任部長、副院長などを経て2009年4月院長就任。
日本消化器外科学会指導医。

TOPINTERVIEW2015

編集長

92年前キリスト教的人道主義に基づき、「治療本位」の民間病院として設立された、岡山県西部の中核を担う倉敷中央病院。
ますます地域住民に必要とされる存在となった病院の魅力や地域貢献への想いを小笠原敬三院長に伺いました。長い歴史を持つ貴院の特徴からお聞かせいただけますか。

小笠原 敬三氏

倉敷中央病院は現在病床1,161床、職員数2,982人が在籍する、大学病院と肩を並べる岡山の中核的な医療機関です。
2013年には救命救急センターとして認可され、備中エリアおよそ80万人の健康を守る為に頑張っています。
他にも総合周産期母子医療センターを有し、地域がん診療連携拠点病院や、地域医療支援病院としても認定され、 1年間の入院患者数は3万人、外来患者数は全国トップの72万人にも上ります。
これは備中医療圏入院患者の4割を担っています。こういう数字を改めて見ると、 東京や大阪じゃなく、倉敷の病院にこんな大勢の患者さんが来てくれるなんて、素晴らしいことだなと実感しますね

編集長

地域住民からは昔から頼りになる病院なのでしょうね。

小笠原 敬三氏

そうですね。倉敷中心部には公立病院がなく、市民病院的な役割を期待されていると思います。創設者は倉敷紡績社長の大原孫三郎で、職員の労働環境整備の一環で1923年に創設されました。当時スペイン風邪で多くの人が命を失ったことに悲しみ、地域住民にも開放した病院なんです。昔は病院と言えば大学病院しかなかったので、一般病院というのはとても珍しいことでした。一般病院でも高度な医療を実現できる病院にしたいということと、あの時代から(大正時代)アメニティを重視し、東洋一の病院を作るという理念の下、設立された珍しい病院です。

今は院内に色とりどり熱帯魚が泳ぐ水槽や絵画、熱帯植物が繁茂する温室、ケーキやお土産を販売するショップなどがあり、とてもユニークな病院だと思います。温室というのは土があるので感染症の面からはあまり好ましくないことですが、彼は緑を見ることで心の安らぎを得られることは自分が病気になった時にも嬉しいことだろうと考えた訳ですね。「病院らしくない明るい病院」という雰囲気が病院内に自然と表れていると思います。このような歴史と大原孫三郎の理念をみなさんにも知って欲しいと思います。

編集長

創設者の理念を90年以上経つ今も、3,000人近い職員に浸透させるということはとても難しいことではないのでしょうか。何か特別なことはされているのでしょうか。

小笠原 敬三氏

特に何かしていることはありませんが、職員がやりがいのある職場になるように、働きやすい職場になるようにということは常に気を付けています。 やりがいがあるということは忙しいということにもなりますが、それで身体を壊してしまっては意味がありません。能力を最大かつ効率的に発揮できる職場環境を作らなければいけませんよね。出来ることから少しずつ取り組んできたことが認めていただけたようで、2008年には「働きやすい病院評価」の認定を受けました。

大原の運営方針には“新しいことの挑戦、自助、独創性を重視”とありまして、できるだけ自分の力で頭をひねり、革新的なことを考え、挑戦して欲しいです。院長の仕事とは“つぶやく”ことなのかなと思っていて、「少し変えてみたらどうかな」とつぶやいてみます。新しい挑戦をしてみてダメならまたやり直せばいいんです。 この病院は誰か一人カリスマ的な人がリーダーシップをとって進む病院ではなく、みんなで話し合って頑張る真面目な人が多いと感じます。職員に対して期待していることは思いやりの心を持つこと、コミュニケーションを欠かさないこと、専門職として常に高い技術を究め続けること。特に思いやりとコミュニケーションは大切です。 特に医師はコメディカルに対して指示を出す立場ですが、指示内容を一方的に伝えることはコミュニケーションではありません。それはただの情報伝達です。きっちり相手に伝わったかどうか、相手がどう感じているかを確認し合うことがコミュニケーションです。そして、患者さんにとって入院とは大きなイベントなんです。病気になって入院するということはとても不安や恐怖を抱えていて、そこで出会う人からかけられる言葉や態度は、患者さんの一生の思い出になります。それが嫌な思い出になるのか、辛い時に優しくしてもらえたいい思い出になるのか、それは私たち次第です。私たちは人とのふれあいを大切にした、心に残る医療を提供していきたいと思います。

編集長

地域連携の重要性が話題になる昨今、倉敷中央病院は近隣の病院や診療所としっかり連携出来ている病院 だと感じますが、どのような仕組があるのでしょうか。

小笠原 敬三氏

当院は岡山で一番地域連携クリティカルパスが多く、病診連携も病病連携も上 手くいっていますね。クリティカルパスには2種類ありまして、「一方向型」と「双方向型」に分けています。一方向型は病病連携、脳卒中や大腿骨頚部骨折などの手術を当院で行った後、回復期リハビリが出来る病院へ紹介し、リハビリに専念し自宅へと戻れるようにします。 それに対して双方向型は病診連携、早期がんや糖尿病など継続的に治療・検査が必要になる患者さんを、病院の主治医と診療所のかかりつけ医で共同で長く治療にあたります。日頃はかかりつけ医が再発防止管理をしながら、検査や手術、入院が必要になればうちが引き受けて治療をします。連携パスというよりは2人主治医制のようなイメージです。その都度適切な対応がそれぞれの医療機関でできるように、共同診療計画書を使って日頃から情報共有をしています。システムがきっちり出来上がっているということもありますが、「うちはここまでやったから後はお願いします」というスタンスではなく、他の医療機関が出来ないことを倉敷中央病院がやる、協働の精神で役割分担をしていくことを大切にしているので、上手く連携できているのだと思います。地域的にも大学などの学閥がないのでお互いが助け合い、いい関係を築けていますね。 医療機関だけでなく、最近は地域連携室が中心になって「わが街健康プロジェクト」というものを立ち上げています。倉敷市内16の病院が“健康を維持するため、病気の予防”についての講演会や、ワークショップを共催で実施しています。

住民が主体になって話し合いをし、自分達の健康維持と上手な病院の掛かり方について知識と意識を高め、もっとこの街を好きになってもらい、そこで得たものを今度は近所の人に広めてもらえたらと思っています。 当初この活動は九州の飯塚病院がされていた取組みでして、それを参考に倉敷中央病院が中心にスタートしましたが、今は規模も大きくなり当院だけのものではなくなりましたので、市民会館で開催されるようになっています。どんどんこういう活動が広まって欲しいですね。

編集長

これからも地域から必要とされる病院である為に、
何をすべきだとお考えでしょうか。

小笠原 敬三氏

地域に密着し信頼される病院にすること。 それを実現すためには医療の質を高め続けることです。医療の質とは何かと言うと、神の手で病気を治すことではなく、有効性、安全性、患者本位、迅速性、効率性、公平性の観点から全ての医療行為が妥当であるかを議論し、実行することだと考えます。 そのためには、医療者が最新の知識や技能を常に探求し、それを共有・協調して治療に取り組むこと。しかしそれはただ無駄をなくすだけではないので、患者さんと向き合うことを疎かにしてはいけません。それは医療人としての義務ですから多忙を言い訳にしてはいけません。 地域住民が病気になった時に安心して掛かれる医療機関が地域で整備されていること。 決して1つの医療機関だけが頑張ってということではなくて、お互いが補完し合って役割分担することで、地域住民が安心して暮らせる街づくりが大事だと思います。

編集長

ありがとうございました。


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