社会医療法人財団 慈泉会

相澤病院

相澤病院 理事長 相澤 孝夫氏

社会医療法人財団 慈泉会

相澤病院 理事長 相澤 孝夫氏

東京慈恵会医科大学卒 / 1981年相澤病院副院長就任
1983年信州大学医学博士学位取得 / 1994年理事長・院長就任
現在は、日本病院会副会長なども務める

TOPINTERVIEW2015

人材不足に悩む病院が多い中、長野県松本市にある相澤病院は、全国から医師や看護師が集まる元気な病院。
赤字病院から信州を代表する病院に立て直したことでも有名な相澤孝夫理事長に、病院運営のポリシーや今後の地域医療の在り方についてお話を伺いました。

編集長

相澤先生が理事長に就任した当時、病院は赤字経営が続いており大変な時期だったと思いますが、まず何から取り組まれたのでしょうか。

相澤 孝夫氏

まずは職員がいきいきと働きやすい職場を作るために、職員に病院が今何をしたいのかを明確にしました。 病院にしても企業にしてもなすべきミッションがあると思います。 そのミッションを達成するためにしっかりとしたビジョンを作ることがガバナンスの統一にも重要ですし、ビジョンが明確な程働きやすい職場になると考えています。 ですから病院がどういうビジョンを持って、どういう働きをするのかを伝えていかなくてはなりません。しかし年に数回経営方針の話をしても殆ど忘れられてしまいます。だから、人事考課という形を借りて伝えていくしかないと考えました。 各部署がどんな方向に向かって、どんな目標を立て、今年1年はどのような活動をしますか、ということを必ず聞きます。そして、個人にはそれを達成するためにどんな計画でやっているのかを聞きます。それが病院としての方向性と合っているのか、目標が達成できたのかを聞いておかなければいけません。その全ては病院のミッション達成へと向けられていかなければなりません。これを繰り返していける病院が強い組織文化が作れるんだと思いますし、それが作れないと長くは生き残っていけないと思います。 人事考課はミッションを達成するために自分がどういう力を付けて、発揮したかを問うためにあります。それがきちんと同じ方向に向いて達成されていれば、それに対して報酬を支払うことは当たりまえのことです。 相澤病院の職員には自分のやりたいことができて、自分が成長していくことにやりがいを感じる人が多いように感じますね。ですから目標達成が報酬に反映されることももちろんモチベーションに繋がるでしょうが、それ以上に自分の成長を実感できることでモチベーションが上がり、いきいきと働けるんだと思いますよ。

編集長

現場では課長職以上を「経営職」と呼び相澤先生自ら一対一の面談をしているというのも、病院のビジョンを浸透させるための方法なんですか。

相澤 孝夫氏

そうですね。3か月に1回面談の機会を作り、3か月間でどのような成果がでて、何が問題点だったかということを聞かせてもらいます。そして新たにやりたいことの相談やアドバイスをもらいに来ますね。具体的にやりたいことの目的はもちろん、それに伴うコストについても自分で調べてくるので、それに対して新しい視点や打開策を一緒に考えます。 現場の声を聞く場でもありますし、病院のビジョンとして相澤病院が地域の中核的存在となるための取り組みを形にしていって欲しいと伝えるようにしています。

編集長

相澤先生がこの面談を通して一番伝えたいこととは何ですか。

相澤 孝夫氏

マネジメントの考え方ですね。 医療の専門科として能力を伸ばすと共に、マネジメント能力を伸ばして欲しいと考えています。マネジメント能力は勉強すればある程度は身に付きますが、実践でどう対処していくかがとても大切です。自分の部署をどういう考え方で運用しようと考えているのか、どのような方法を使って、それを上手く機能させているのかを聞きます。上手く機能していないようであれば、考え方の視点を変えるアドバイスをすることで、本人が気付きそれが経験となり成長して欲しいと思っています。

編集長

トップダウンでビジョンを押し付けるのではなく、視点を与え自ら気づき考えるきっかけをもらえるので、自分自身を伸ばしていくことができるのでしょうね。 成長できるとは自己実現ができる場所という考え方ができると思います。それが相澤病院に医師やコメディカルが集まる理由なんでしょうか。

相澤 孝夫氏

言えることは様々な症例とそれを指導してくれる先輩がいることが一つ。 もう一つは自分のやりたいことを前向きにできることでしょうか。病院の方向性と合っていれば新しい技術の習得やシステム・デバイスの導入は積極的に行います。患者さんのためになる先端技術はいち早く外部研修に行かせたり、著名な医師を呼んで勉強会をしたり、そこに出し惜しみはしません。職員の自由度が高いということが理由かもしれませんね。

編集長

その1つとも言えるASC(相澤シミュレーションセンター)についても伺えますか。

相澤 孝夫氏

ASC開設の目的は2つありまして、1つは個人の技術向上、もう1つはチーム医療の役割向上です。 特にチーム医療の役割向上は、例えば救急搬送されて来た患者さんをチームでどう役割分担して、いかに短時間で最高の処置ができるかという訓練をさせるためです。 お互い役割分担をしながら協力しあうことができれば、もっと全体的に質の高い医療を提供することができると思います。そういう発想で開設しましたが、まだまだこれからの取り組みですね。

編集長

2014年は診療報酬の改定や病床機能分化、地域包括ケア病棟の開始など医療界に大きな変化がありました。社会情勢としても人口減、超高齢化社会の進行がますます進んでいますが、その中で相澤病院は地域に何を求められていると思いますか。

相澤 孝夫氏

当院はずっと高度急性期医療、急性期医療を担ってきて、それはこれからも変わらない部分ではあります。しかし人口が減るということは急性期医療を必要とする人もどんどん減っていくことは間違いないんですね。だから、ダウンサイジングして高機能・高効率で患者さんを診ていく必要があると思います。一方、高齢化に対しては既に急性期病棟の中に回復期リハビリ病床を立ち上げ、急性期からのタイムラグを無くして、早期のリハビリが可能になれば自宅に戻れるような人をサポートする環境を地域として整備しようと取り組んでいます。次に地域包括ケアのための新病院「相澤東病院」を2016年に開院を予定しています。この病院は在宅医療を支援するための入院機能と、急性期治療後の在宅復帰や転院までの回復期入院機能、生活機能改善のための入院集中リハビリ機能を担います。特にこの地域には村が点在していて、村には診療所しかなく、当院から退院しても回復期治療を行える施設がありませんでした。ですから、急性期治療後に自宅に戻るための場所が必要だと考えました。地域医療というのは地域の事情とこれまでその病院が担ってきた役割と、今後担うべき役割によって判断すべきものです。 そして地域の人々が『ここにいて良かったな』と思えるような地域づくりができればと僕は思っています。それは何も医療・介護の分野だけでなく、安心して暮らせる地域づくりを、地域の人と一緒になって考えていくことが病院の役割でもあると思うからです。

編集長

今後の地域医療について、日本の病院全体、医療従事はどんな思いを持って行動するべきでしょうか。

相澤 孝夫氏

地域の人、地域の人を治すと共に、支えることが医療の役割だと思っています。これまで以上に日本は人口が減少しますので、社会情勢の変化に合わせた医療・病院の在り方というのを新しく作っていかなくてはいけません。医療を起点として社会を考え直す、地域を考え直すということが重要だと思います。 未来を真剣に考え、行動していくことは難しく、受け入れられないこともあります。しかし誰かが考え行動し、範を示さないと変わりませんから、相澤病院がそれを実践して発信し、1つのモデルになれればいいなと思っています。

癌の集学的治療体制を充実させるため2014年秋には陽子線治療装置の稼働がスタート。まだまだ夢があると相澤先生の声は弾んでいました。 中信地方の中核を担う同院は最先端の医療の提供だけでなく、病院が中心となった社会づくりまでも視野に入れ、ますます躍進していくことでしょう。


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